日記

吉村昭氏 死去

今朝のニュースで、作家・吉村昭氏が亡くなられたことを知りました。
歴史小説が好きな私にとって、ショックなニュースでした。
http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20060825i301.htm
http://www.tokyo-np.co.jp/00/thatu/20060822/mng_____thatu___000.shtml
吉村さんの小説は、徹底した調査と現地取材を元に、妙な肩入れ無しに
人物が描かれているという点で好感が持てました。
作家本人の主観に偏ったセンチメンタルな歴史小説が嫌いな私にとって、
時には、残酷なほどに主人公を客観描写する氏の姿勢は大変に潔く、例え
私感が入っていようとも(私感が入らない歴史小説なんて無いんですが)、
本の中の出来事が、現実に起こっているような気にさせられるのでした。
そんな吉村さんの小説に出会ったのはずいぶん前で、主に図書館のお世話に
なっていましたが、再会したのは転勤で東京に移り住んだ時のことです。
旅に出る前には「その土地を描いた(または出身者の)作品を読む」ことを
心がけている私は、東京に引っ越す荷物を整理しながら「はて、東京なら
誰の本を読むべきか?」と考えました。
「日暮里に住むから、、、吉村昭さんだな。あとご近所は、森鴎外か。
夏目漱石は、ちょっと遠いからパス」と、早速、本屋へ行きました。
その時買ったのは「街のはなし」というエッセイで「日暮里出身の氏が
書いたのだから、自分がこれから住む土地のことが、多少わかるかも」
と思って手に取りました。(森鴎外の本は、ご想像にお任せします)
その後、長崎へ旅行した時に読んだのは「ほぉん・しいほるとの娘」
でした。
偉大なシーボルト像から女性にだらし無い姿までキッチリ描かれていて、
立派な歴史上の人物が、見事に「生身の人間」へと巻き戻されて
いました。
シーボルトの娘が、日本の医学に大きな功績を残した人だと
いうことも、小説を読んで初めて知りました。
そんな歴史の陰に隠れている人の足跡を丁寧に掘り起こす作業が
あるからこそなのでしょう、読んでいると長崎の街の細かい情景と
空気が自然と私の中に広がり、実際に長崎を訪れても、それは全く
裏切られませんでした。
氏の小説は、残酷な事実からも目をそらさないがゆえに、ページを
開くのに勇気が必要なものもあるのですが、また新しい本を
読んでいきたいと思いました。
***
吉村さんの「死に様」にも考えさせられるニュースでした。
「私ならどうする?」と思ったけれど、答えは未だ見つかりません。
吉村氏のご冥福を心からお祈りします。

2件のコメント

  • yuri

    昼間にニュースを見ましたが、
    何をした人なのか、恥ずかしながら知りませんでした。
    そうか、作家さんやったのね。
    今まで、プライベートな読書はほとんどしませんでした。
    最近、なんか小説も読んでみようと思って、
    ふと目にとまった野中柊さんのを一冊借りてみたら、
    なんか、不思議な世界に呑み込まれた感じになりました。
    これが、本の世界ってやつかね。
    吉村さんの本も、読んでみたいな。
    運動ばっかしてないで、本も読みたいと思います!

  • ゆふこ

    私もなかなか読めないんだけどね。。。
    特に本棚から既に本が溢れているから
    今のところ買うこともできないし。
    (図書館に行ったら良いかもしれないけど遠い)
    でも、もうすぐ大きな本棚が出来るハズなので、
    その時は、好きな本を買うぞ~。
    小説は、作者が作り出した、でも、自分だけの
    空想の世界へ入り込めて、けっこー快感です。
    歴史小説も面白いから読んでみてくださいまっし。
    「歴史は繰り返される」というのが、よ~~く
    わかります。

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