勉強部屋のパネル <本>
まずは、4つ描いた絵のうちの「本」です。
絵を描くときに「世界で一番美しい本は何だろう?」と考えたら、すぐに思い浮かびました。
昔、アイルランドを旅した時に見た「ケルズの書」です。
アイルランドの修道院では、装飾文字とケルト模様を駆使した聖書の写本がたくさんあります。その頂点と申しましょうか、ケルズの書は「世界の宝」とまで呼ばれる美しい写本のことです。
本の隅から隅まで「これでもか!」と描き込んであり、そのネチコさは半端無く、 水木しげる大先生も真っ青の細かさです。
アイルランドで波と岩の間に建つ修道院を見て「こんな地球の最果てみたいな場所で修道院に籠ってたら、人生、これしか無かったんだろうなぁ」と思いました。ネチコイのが大好きな私は、少し羨ましかったです。
人生をかけて描く修道士さんの絵は「凄ざまじい」の一言です。
文字は信仰を超えて、もはや「絵画」です。
ケルト模様にうなされた私は、ケルト模様の描き方の本やスタンプまで買ってきてしまいました。今になってみると、ケルト模様もステンドグラス制作の参考になるので、人生、何がどう役に立つかわからないものです。
本当は自分が作るパネルの絵にもケルト模様を入れたかったのですが、何が言いたいのかわからなくなるので、「本」という印象だけが目に飛び込んでくるように描きました。見本は、もちろん「ケルズの書」です。
本が薄らと黄ばんで見えるのは、ガラスの裏からシルバーステインを使って着色したからです。古くから教会の天使の金髪にするために使われていたような古い技法です。
わりとシンプルに見える絵ですが、こんな風に色んなことを考えながら描いています。