作品

吊りさげ型「花のランプ」

「部屋には緑色のソファがあるので、緑色を使った吊りさげ型のランプを作ってください」とのオーダーを受けました。

ホテルオークラにあったランプが奇麗だったと写真をもらい、にらめっこすること数ヶ月。作った模型の数は、紙では4〜5個、実際にガラスで作ってみたのが2個。ランプに似合うガラスは探しに探して、3種類のガラスを3軒のガラス屋さんから仕入れました。

ようやく作ったランプは、下部分が12面体で上部分が6面体という、作った人には複雑だけど見た目にはかなりシンプルな出来あがりになりました。ホテルオークラのランプは細長かったのですが、私は丸いほうが可愛いと思ったので、そうして作ったら気に入っていただけました。

「緑色のガラス」というのも悩みどころでした。食卓の上に吊るすということだったのですが、寒色のライトはご飯が美味しく見えないから合わないのです。暖色が良いけれど、緑のガラス…と悩んでいたら、ガラス屋さんの片隅に佇んでいる薄緑色のガラスが目に入りました。

「このガラスは古くてもう作られていない上に、在庫も少ししか無いから売れなかったけれど、これだけで良かったら分けますよ」とのことでした。

淡い緑が奇麗だったのですが、光にかざすとオレンジがかった暖色に変化しました。昔はよくあったタイプのガラスだそうです。

「あまり売らないでくださいね。もう在庫がありませんからね。」とガラス屋さんが心配しましたが、「これしか無い」と決めました。リクエストの緑色だけど、食事の時にはライトをつけるだろうから、その間は暖色になってくれる。これ以上のガラスがありましょうか。

ランプの注文をくれたのは、中学時代の後輩でした。彼女は今も昔も「ぷーさん」と呼ばれています。

ゆふ工房は、去年の12月に自宅を飛び出して山科駅近くの新工房へ移転しましたが、当時は仕事のアテも無く、教室の生徒さんも少ない中、赤字覚悟の決断でした。

そんな五里霧中の時に、ぷーさんが遊びに来て「ランプをお願いしたい」と、何も作っていないのに代金をポンと置いていってくれました。それは、そのまま翌月の家賃と光熱費になりました。

その後、あれよあれよと仕事が増え、教室の生徒さんも増え、寒い工房に春の日ざしが差し込む頃には、休む暇もないくらい忙しくなりましたが、もしもあの時、ぷーさんが気前よくランプ代を支払ってくれていなかったら、今の工房があっただろうか、と思います。

ぷーさんからは、ランプを吊るした部屋の写真をもらいました。

3つ並べると豪華ですね。今度は、ピンクで桜の蕾っぽく作ってみようかと考え中です。

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