日記

衣装到着

独身貴族だった頃、私は年に一度は海外を旅してまわっていました。

旅の途中には、必ず本屋さんと、出来れば布地屋さんに寄ることにしていました。

 

もう20年ほど前になりますが、1人で旅したイタリアのミラノで、ドゥオーモ(教会)の北側に伸びる石畳の道を歩いて行くと、生地屋さんがありました。

何処の国でも、本屋さんで話をすることはありませんが、布地屋さんでは、お店の人が必ず話しかけてきます。

いつもお決まりの会話は、こうです。

「あなたみたいな若い人が裁縫をするなんて、嬉しいわ。私の国じゃあ、もう若い人は布地なんて買わないのよ。」

私が「日本でも、若い人はあまり裁縫をしません。」なんて言わずにニコニコしながらおばさんの話を聴いていると、大抵「たくさん作ってね」と、オマケしてくれます。

でも、ミラノのその布地屋さんは、今まで入ったお店とは少し雰囲気が違っていました。たぶん、オーダーメイドのスーツやドレス用の布地を扱うお店で、店員さんは紳士的に微笑むおじさまでした。

日本では見たこともない色鮮やかなワインレッドのシルクサテンに目を奪われた私は「これをどうやってドレスにしたら良いですか?」と訪ねると、店員さんは「この黒いビーズレースを合わせたら奇麗だからそうしなさい」とアドバイスしてくれました。

ドレスを着る予定も何も無かったけれど「え〜い!」と買った布地は、その後、何事も無く私の4回の引越に付き合い、袋の中で眠ったままでした。

 

今回、久しぶりの本番を弾くにあたり「衣装はカラードレス可」と決まったものの、もう昔のドレスは入りません。(涙)

そこで「そうだ!布地ならある!」と20年前の布を引っ張り出し、試行錯誤の後「自分でドレスに仕立てるのは無理だ(時間的にも技術的にも)」と諦めた私は、いつもお世話になっている委託先の「fil de chaine(フィル ドゥ シェンヌ)」さんに相談しました。オーナーの生子さんは、服飾作家さんです。

初めて相談した時から約2ヶ月。

いっぱいワガママを言って、作っていただいたドレスを、昨日、生子さんが届けてくださいました。

ドレスをハンガーにかけて写真を撮ったら、立体的な縫製が全くわからないので、掲載するのを諦めました。どんなドレスになったかは、本番で見てくださいね。

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追伸:聴きに来てくださるかたは「手みやげでも」なんて思わないでくださいね。聴きに来てくださるだけで、充分私は幸せです。

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