北駅と南駅
<北駅と南駅>
鉄道発祥の地イギリスでは、大きな駅のプラットフォームが櫛形になっていることが多く、線路には車止めと呼ばれる「つきあたり」があります。横にずらっと並んだ列車と広いプラットフォームは壮観で、とても素晴らしい光景です。
同じ駅名でも、北へ向かう列車は北駅から、南へは南駅から、と駅舎が分かれていることもあり、鉄道の通過駅しか知らない日本人は列車を探して迷ってしまいます。
街のモデルはエディンバラ、南駅はパディントン駅、列車は南駅がユーロスター、北駅がスコットレイルと、イギリスのイメージが混在した絵になっています。昔のエディンバラ駅は北と南に分かれていたはずですが、現在は駅舎が一つになっています。過去の記録が見当たらず、あれは夢だったのかとも思いましたが、昔、ようやく北駅にたどり着いた途端に走り去った列車は幻ではなかったと確認しています。
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この作品では、フュージング専用のガラスを多用しています。
硫黄系のガラス(黄色)と銅を使ったガラス(青色)を一緒に焼成すると、接触面が黒化するという現象が起こります。これをガラスメーカーでは「面白い変化」ととらえ、リアクティブを起こすガラスとして紹介しています。
今回は、古い街の雰囲気を出すために、フレンチバニラ色のガラスに青いガラスのパウダーをまいて焼成し、建物の壁のモヤモヤとした模様を出しました。窓も、様々な青系のガラスを使ってリアクティブを起こしています。
空は、どんよりとした冬の雲を表現するためにラベンダー色の氷砂糖のような風合いのガラスを使いました。
色数を抑えることで、冬のヨーロッパの雰囲気を出したかったので、生徒さんたちから「ステンドグラスとしては珍しい色合いで、とても素敵です」と褒められて、とても嬉しかったです。